血まみれの男
2007年5月11日とある日の深夜、寝ようとしていたら血まみれの男が家に入ってきた。
僕は基本的に家にいる時に鍵をかけない。
下手すると出掛けてる時でさえも鍵をかけないことがある。
だって鍵をかけずに出掛けて泥棒に入られる確率と、
出掛けて交通事故にでもあって死んじゃう確率なんて
そう大して違いがないように思えるから。
でもまさか寝ようとしてたら血まみれの男が入ってくるなんて想像もしないじゃない。
この世の中にはそこまで想定して暮らしてる人もたくさんいるんだろうけど、
少なくとも僕はそんな低確率の出来事には注意を払っていなかった。
これっぽっちも。
とりあえず入ってきてしまったものはしょうがない。
今更後悔したって元には戻らない。
「ここは君の家じゃないよ」
とりあえず話しかけてみた。
「あぁそいつはごめんなさい。でも家がどこかわからないんだ。」
どうやら強盗とかそういった類の人間ではなさそう。
でもよく見たら血だらけ。なんなんだこいつは。
「じゃあ一緒に探してあげるから。少なくともここは君の家じゃないから。」
とりあえず、まずは家の外に連れてくことにした。
いつまでも家の中にいられたらたまったものじゃない。
「君の家はこのアパートなのかい?」
「うん、そう」
といって血まみれの男は階段を上り始めた。
酔っ払った人間が同じアパートの違う部屋に間違えて入ってしまうのはよく聞く話だ。
この男が自分の部屋に戻ってくれさえすれば、僕はぐっすり眠れる。
なんといってもその日は日曜の深夜(つまり次の日は月曜日)だったし、
一番寝なければいけない時間だった。
最上階に到着すると男はドアの鍵を開けようとしはじめた。
でも一目見て、男が手にしている鍵は僕のアパートの鍵じゃないことがわかった。
「ちょっと鍵かしてみ」
鍵の束を受け取って探してみたが、やっぱりアパートの鍵は無い。
「君の家はここじゃないんじゃない?」
「いや、そんなことはない。でもそう言われるとそんな気もする。よくわからない。」
僕だってわけがわからない。
この血まみれの男は完全に記憶が飛んでて、家に帰りたがってることは分かる。
とりあえずアパートから出て街を歩き始める。
でも血まみれの男の家がこのアパートじゃないとしたら、何時間歩き続ければ家に辿りつけるのだろう。
血まみれの男と一緒に朝ごはんを食べるはめになるかもしれないし、
それこそ太陽が何週もしてしまうかもしれない。
「救急車よぼっか。警察よりはマシでしょ?」
「うんそうだね、それが良いと思う。でもお兄さんは有名な人じゃないの?」
「僕は何にも有名ではないけど」
「ならよかった、有名人だったら迷惑がかかっちゃうところだもんな」
「有名人でもなんでもないただのサラリーマンだからそんな心配しなくていいよ」
とりあえず携帯も持たずに家から出てきたから、近所にあるコンビニに行って救急車を呼んでもらうことにした。
このコンビニは僕がいつも使ってる店だから、あまりこういう状況で行きたくはなかったけど、
別のコンビニにいくにはずいぶん歩かなければならないし、血まみれの男はフラフラしてるし、他に選択の余地はなかった。
家に携帯をとりに帰るという手もあったけど、血まみれの男を連れてもう一度家に戻るなんてそれこそうんざりだった。
とりあえずコンビニの店員に救急車を呼んでもらった。
救急車が来るまでの間、僕と血まみれの男はコンビニの外で救急車を待つことになった。
いくら深夜とはいえ、血まみれの男と雑誌でも立ち読みしながら待つなんてわけにはいかない。
通りには人通りはほとんどない。なんせ日曜の深夜なんだ。
みんな月曜日に備えてたっぷり休息をとっている時間帯なんだ。
僕らは例外的存在。だれも望んでいない存在。
「お兄さんいやじゃない」
「なにが?」
「ここの店員とか、最悪の人間だよ。見れば分かる。」
「君の言いたいことはよく分かるけど、あういう人達もいるし、
ああいった人達が必要とされる空間だってちゃんとあるんだ。」
そして僕は限りなくあちら側の人間なんだよ。
「そんなもんかね。タバコ吸う?」
血まみれの男にタバコを貰って火をつける。
今から寝ればまだ4時間くらい寝れる。
1日集中して仕事を乗り切るには心もとない睡眠時間だけど、
だからといって絶望的な睡眠時間でもない。
「あぁもう最悪だ」
「これもおもいでおもいで」
友達がよく言ってたな。おもいでおもいで。
「思い出ねぇ・・・」
「君が今のことを明日覚えているのかどうかは怪しいけどね」
「それは一理あるね」
救急車がやってきた。血まみれの男は救急車の人達に乗せられていく。
「お知り合いですか?」
「いえ、全然」
例えば、血まみれの男が酒飲んで事故ってああいう状態になっていたとしたら、
明日起きてから大変だろうなぁと思う。
でもそれは彼の問題であって僕の問題ではない。
僕はとにかく眠らなければならなかったし、
彼の名前さえ知らないんだぜ。
僕は基本的に家にいる時に鍵をかけない。
下手すると出掛けてる時でさえも鍵をかけないことがある。
だって鍵をかけずに出掛けて泥棒に入られる確率と、
出掛けて交通事故にでもあって死んじゃう確率なんて
そう大して違いがないように思えるから。
でもまさか寝ようとしてたら血まみれの男が入ってくるなんて想像もしないじゃない。
この世の中にはそこまで想定して暮らしてる人もたくさんいるんだろうけど、
少なくとも僕はそんな低確率の出来事には注意を払っていなかった。
これっぽっちも。
とりあえず入ってきてしまったものはしょうがない。
今更後悔したって元には戻らない。
「ここは君の家じゃないよ」
とりあえず話しかけてみた。
「あぁそいつはごめんなさい。でも家がどこかわからないんだ。」
どうやら強盗とかそういった類の人間ではなさそう。
でもよく見たら血だらけ。なんなんだこいつは。
「じゃあ一緒に探してあげるから。少なくともここは君の家じゃないから。」
とりあえず、まずは家の外に連れてくことにした。
いつまでも家の中にいられたらたまったものじゃない。
「君の家はこのアパートなのかい?」
「うん、そう」
といって血まみれの男は階段を上り始めた。
酔っ払った人間が同じアパートの違う部屋に間違えて入ってしまうのはよく聞く話だ。
この男が自分の部屋に戻ってくれさえすれば、僕はぐっすり眠れる。
なんといってもその日は日曜の深夜(つまり次の日は月曜日)だったし、
一番寝なければいけない時間だった。
最上階に到着すると男はドアの鍵を開けようとしはじめた。
でも一目見て、男が手にしている鍵は僕のアパートの鍵じゃないことがわかった。
「ちょっと鍵かしてみ」
鍵の束を受け取って探してみたが、やっぱりアパートの鍵は無い。
「君の家はここじゃないんじゃない?」
「いや、そんなことはない。でもそう言われるとそんな気もする。よくわからない。」
僕だってわけがわからない。
この血まみれの男は完全に記憶が飛んでて、家に帰りたがってることは分かる。
とりあえずアパートから出て街を歩き始める。
でも血まみれの男の家がこのアパートじゃないとしたら、何時間歩き続ければ家に辿りつけるのだろう。
血まみれの男と一緒に朝ごはんを食べるはめになるかもしれないし、
それこそ太陽が何週もしてしまうかもしれない。
「救急車よぼっか。警察よりはマシでしょ?」
「うんそうだね、それが良いと思う。でもお兄さんは有名な人じゃないの?」
「僕は何にも有名ではないけど」
「ならよかった、有名人だったら迷惑がかかっちゃうところだもんな」
「有名人でもなんでもないただのサラリーマンだからそんな心配しなくていいよ」
とりあえず携帯も持たずに家から出てきたから、近所にあるコンビニに行って救急車を呼んでもらうことにした。
このコンビニは僕がいつも使ってる店だから、あまりこういう状況で行きたくはなかったけど、
別のコンビニにいくにはずいぶん歩かなければならないし、血まみれの男はフラフラしてるし、他に選択の余地はなかった。
家に携帯をとりに帰るという手もあったけど、血まみれの男を連れてもう一度家に戻るなんてそれこそうんざりだった。
とりあえずコンビニの店員に救急車を呼んでもらった。
救急車が来るまでの間、僕と血まみれの男はコンビニの外で救急車を待つことになった。
いくら深夜とはいえ、血まみれの男と雑誌でも立ち読みしながら待つなんてわけにはいかない。
通りには人通りはほとんどない。なんせ日曜の深夜なんだ。
みんな月曜日に備えてたっぷり休息をとっている時間帯なんだ。
僕らは例外的存在。だれも望んでいない存在。
「お兄さんいやじゃない」
「なにが?」
「ここの店員とか、最悪の人間だよ。見れば分かる。」
「君の言いたいことはよく分かるけど、あういう人達もいるし、
ああいった人達が必要とされる空間だってちゃんとあるんだ。」
そして僕は限りなくあちら側の人間なんだよ。
「そんなもんかね。タバコ吸う?」
血まみれの男にタバコを貰って火をつける。
今から寝ればまだ4時間くらい寝れる。
1日集中して仕事を乗り切るには心もとない睡眠時間だけど、
だからといって絶望的な睡眠時間でもない。
「あぁもう最悪だ」
「これもおもいでおもいで」
友達がよく言ってたな。おもいでおもいで。
「思い出ねぇ・・・」
「君が今のことを明日覚えているのかどうかは怪しいけどね」
「それは一理あるね」
救急車がやってきた。血まみれの男は救急車の人達に乗せられていく。
「お知り合いですか?」
「いえ、全然」
例えば、血まみれの男が酒飲んで事故ってああいう状態になっていたとしたら、
明日起きてから大変だろうなぁと思う。
でもそれは彼の問題であって僕の問題ではない。
僕はとにかく眠らなければならなかったし、
彼の名前さえ知らないんだぜ。
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